実績

2026.04.01

補助金

補助金は「採択後」に失敗する?現場で実際にあった事例二選

いつも記事をお読みいただきありがとうございます。

補助金のゴールって何処にあると思いますか?ネットで検索すると「採択率○%」のような謳い文句をよく見かけます。しかし、見逃してはならないのは、補助金は「採択後」に失敗するケースが多いのです。

本記事は、現場で実際にあった採択後の失敗事例に関するお話しです。

これから申請をご検討される方は、ぜひ参考にしていただければと思います。リスクは事前に回避し、補助金を大いに活用したいところですね。

事例①:銀行からの融資が降りなかった

補助金を活用して最新の設備を購入したい。
このようなことを御検討される事業者様もいらっしゃるのではないでしょうか。

例えば、設備の導入費用が1,000万円だったとします。しかし、補助金だけで1,000万円をカバーできるわけではありません。多くの補助金では「補助率」というものが設定されている。もし補助率が2分の1ならば、1,000万円の導入費用に対して補助金額は500万円です。

では、残りの500万円をどうすればいい?

もちろん、自腹で賄わなければなりません。

そこで登場するのが金融機関ですね。仮に事業計画書が採択になっても、融資の審査が通らなければ、設備は導入できません。どこの金融機関も審査が降りない。ズルズルと時間が経つうちに、気づいたら補助事業が期限切れになっていた。

特に、コロナ禍の事業再構築補助金では、そのような事例が後を絶ちませんでした。

事例②:賃上げ要件を満たせず補助金返還になった

近年はどの補助金も、その見返りに賃上げ要件が課されます。

設備投資をする

生産性が上がる

付加価値が上がる

稼いだ付加価値で賃上げ

政府としては、こうしたストーリーに補助金を交付したいということですね。

しかし、蓋を開けてみると、補助金の交付を受けて気が抜けてしまう事業者さんも多いです。

例えば、初期のものづくり補助金では、給与支給総額(全従業員の給与の総額)の増加目標は年平均1.5%でした。申請前の給与支給総額が1億円(100,000千円)だったとします。これを3〜5年計画で毎年平均1.5%ずつ上げなければなりません。

イメージとしては以下のような感じです。

・1年後:100,000千円×1.015=101,500千円
・2年後:101,500千円×1.015=103,023千円(※)
・3年後:103,023千円×1.015=104,568千円(※)
※便宜上、小数点第一位を四捨五入しています。

つまり、3年後には給与支給総額を約457万円(4,568千円)上げなければならない計算です。

中小企業にとっては決して馬鹿にできない金額です。賃上げ要件をうっかり忘れようものならば、その先に待っているのは補助金の返還です。

では、どうすればいい?

補助金の審査は「計画の良さ」で判断されます。

一方で、実際の経営で問われるのは「その計画を実行できるのか」「資金は回るのか」という現実の視点です。

さらに金融機関は「返済できるのかどうか」という別の視点で判断します。

近年の補助金制度は、賃上げの水準も上がっているので、採択ばかり見ていると、補助金交付後に首を締め付けることになりかねません。

計画と現実のギャップを埋めることが、補助金を上手く使うポイントとなります。

具体的な対策を3つ述べたいと思います。

対策①:借りられる財務体質か?まずは決算書をチェック!

銀行から毎年出すように言われる書類がありませんか?

そう、「決算書」ですね。

いくら補助金が採択されても、決算書が悪ければ銀行はお金を貸しません。

しかし残念ながら、中小企業支援に携わる中で見てきたのは、これだけ大事な決算書を漠然と作っている会社がどれだけ多いことか。

税理士さんに丸投げし、何となく決算書を作ってもらう。

では、どんな決算書ならばお金を貸してくれるのでしょうか。簡単ですが、チェックポイントをまとめてみました。

  • 営業利益が黒字か?
  • 営業利益で利息を賄えているか?(経常利益黒字が目安)
  • 債務超過になってないか?
  • 売上や利益が毎年安定しているか?
  • バランスシート(貸借対照表)に回収不能な資産(貸付金など)が紛れてないか?

対策②:その投資でどれだけ儲かる?「蓋然性」を緻密に立てる

金融機関がもう一つ重視するのが、「この投資は本当にうまくいくのか?」という視点です。専門的には「蓋然性」と呼ばれますが、要するに「どれくらい現実的か?」ということ。

売上高一つとっても、以下のように因数分解ができるはず。

  • 価格は?その価格は競合他社と比べて高い?それはなぜ?
  • ターゲット顧客は?商圏内に潜在的にどれ位いる?
  • ニーズは本当にあるのか?その根拠は?
  • その客数が実現する確率は?

将来のことなんて分からないかも知れないですが、こうして数字を詰めるだけでも「この人ちゃんと考えているなあ」と違った印象になります。

対策③:賃上げのシミュレーションを立ててみる

中小企業向けの補助金で要求されることは、ざっくり以下の2つです。
・付加価値を上げる
・従業員の賃上げをする
この2つを満たす王道の事業計画を立てられているか。

付加価値というのは粗利益(売上高―仕入・外注費)とほぼ同じ意味です。補助金の公募要領ではなぜか、「付加価値=営業利益+減価償却費+人件費」と定義されていますが、これは恐らく、粗利益の中から付加価値と関係なさそうな余分な経費を控除したのだろうと思います。

要するに、付加価値は賃上げの原資になるのです。設備投資の結果として、付加価値額を上げることが大前提。

給与支給総額の増加目標は、公募要領の中に書かれています。増加目標が仮に3.0%ならば、現在の給与支給総額を基準に、毎年の目標額を計算して見てください。その数字を見て、本当に達成できそうか、イメージしてみるのです。エクセルがあれば、計算は簡単です。

感覚的に「これは行けそうだな」と思うならば、事業計画づくりにチャレンジしてみるのはありかもしれません。

最後に:採択狙いの事業計画書はご法度!補助金入金後も見据えた計画を!

補助金はあくまでも手段であり、事業そのものではありません。

事業として成り立つものに補助金を重ねると力になりますが、補助金ありきで組み立てた事業は、どこかで歪みが生じます。

補助金の力を活かすためにも、目の前の数字と日々の経営にしっかりと向き合うことが大切です。ご機嫌に中今を整えることが、結果として未来の安定につながっていきます。